抄録
ハロベンゾキノン類(HBQs)は,新規の消毒副生成物として関心が高まっている物質群である。本研究は日本の水道におけるHBQsの実態把握を目的として,HBQsのうち2,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン(DCBQ)について,固相抽出とLC-MS/MSを組み合わせた測定法を検討した。DCBQの定量は,固相抽出後の窒素吹付による濃縮前の標準添加が適していた。本法の定量下限値を8 ng·L-1と設定した。夏季と冬季に全国12箇所の浄水場系統の水道水中のDCBQ濃度を測定した結果,DCBQは24試料中21試料に存在し,その濃度範囲は8~51 ng·L-1であった。1浄水場を除き,全ての浄水場系統の水道水からDCBQの存在が確認され,国内の水道水に広く存在することがわかった。水道水中のDCBQ濃度とクロロホルム濃度との関連性をスピアマンの順位相関係数を用いて評価した結果,両者に関連性が認められた。