抄録
下水道の普及に伴い, 河川など公共用水域に占める下水処理水の量的割合が増加し, 下水道が水循環や水環境に与える影響を把握する必要性が高まっている。そのためには市民の下水道に対する理解や協力が不可欠であるが, 市民や若い世代の下水道への関心が低いことが, 大きな社会的な課題となっている。著者らは平成26年度より「下水道を核とした市民科学育成プロジェクト」を始動し, 市民科学の手法を用いて, 市民・学生が河川における下水道の機能や価値を科学的に学ぶプロジェクトを試みた。モデル流域として境川水系を選定し, 流域内の3河川の下水処理方式により河川の水質に与える影響は異なるとの推測を検証することを目的とした。その結果, 河川のアンモニウム態窒素濃度, 硝酸態窒素濃度, N-BODは下水処理場の処理方式によって影響を受けることを, 地域の河川愛護会, 行政, 大学, NPO, 企業の協働で明らかにした。