水環境学会誌
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39 巻, 5 号
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ノート
  • 渡辺 悟史, 山田 一裕, 櫻井 一平
    原稿種別: ノート
    2016 年 39 巻 5 号 p. 137-143
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 東日本大震災により消失した北上川河口ヨシ原の再生に向けた小株移植について, 作業性を考慮し, 地上部を刈り取った・刈り取らないヨシ小株の移植に適した冠水条件 (水深・冠水時間・塩分) を実験的に検討した。その結果, 地上部を刈り取ったヨシ小株の移植に適した水深と冠水時間はそれぞれ20 cm以下, 12 hrs d-1 (2 cycles d-1, 6 hrs cycle-1) 以下だと推測された。また, 塩分濃度1.5~2.0%は, 冠水12 hrs d-1・水深10 cmの条件であっても同小株の移植には不適であることが推測された。一方, 地上部 (生きた葉茎と枯れ茎) を刈り取らないヨシを水深10 cm, 20 cm, 30 cm, 40 cmの条件で1日当り24時間冠水させた時, 初期生長は阻害されなかった。このことから, 地上部を刈り取らないヨシ小株の移植において, 水深10~40 cmが常時続くような冠水条件は問題ないことが推測された。
技術論文
  • 武田 茂樹, 西村 文武, 高岡 昌輝
    原稿種別: 技術論文
    2016 年 39 巻 5 号 p. 145-152
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    都市下水の大規模処理施設や既存処理施設への適用に適し, アンモニアから亜硝酸を生成しつつアナモックス反応を同時並行で進められるプロセスについて, 実用的な処理速度を確保するための設計・操作因子について検討した。常温の実下水を用いたベンチスケール実験を行うことにより, 次の知見を得た。①Kj-N負荷が少なくとも100 mg-N L-1-担体 hr-1 以下であれば, T-N除去速度は担体量律速とならないと考えられる。②T-N除去速度は槽内NH4-N濃度の1/2乗に比例する。それゆえ, 処理時間短縮のために反応槽を押出流れに近い形にするのが望ましい。③反応槽各区画において槽内NO2-N濃度に基づいた曝気風量制御を行うのが有効と考えられる。④担体流動のための撹拌強度には, T-N除去速度を低下させない下限値が存在する。動力低減のために下限値付近にて運転する必要がある。
調査論文
  • 佐藤 学, 上村 仁, 小坂 浩司, 浅見 真理, 鎌田 素之
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 5 号 p. 153-162
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    神奈川県の水道水源河川である相模川水系の河川水及びそれらを水源とする水道水について, 2014年4月より一年間, ネオニコチノイド系農薬6種, ブロマシル, テブコナゾール, テフリルトリオンおよびテフリルトリオン分解物の実態調査を行った。河川水からは調査期間中9物質が検出された。イミダクロプリド, テフリルトリオン等は農薬の適用時期に濃度が上昇する傾向がみられたが, 都市部の除草剤等としても使用されるテブコナゾール, ブロマシルは農薬の適用期間外においても検出された。実態調査の結果を環境中予測濃度 (PEC) と比較したところ, テブコナゾール及びブロマシルにおいて測定値が水産動植物PECを超える採水地点が確認された。水道水からはイミダクロプリド, クロチアニジンが河川水中濃度と比較的近い値で検出された。また, 水道水中からはテフリルトリオン分解物が検出され, その濃度推移は河川水中のテフリルトリオンの濃度推移とほぼ一致した。
  • 髙橋 和彦, 渡部 雅也, 大谷 康彦, 工藤 潤, 金澤 弘之, 小園 一郎, 山口 秀幸, 細見 正明, 畑 恭子, 永尾 謙太郎
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 5 号 p. 163-170
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    地中から汲み上げられる天然ガス鹹 (かん) 水から天然ガス・ヨウ素を採取した後, 排鹹 (かん) 水 (200 mg L-1程度のアンモニア態窒素 (NH4-N) を含む) が直接放流されている夷隅川 (千葉県九十九里地区) において, 放流地点から汐止め堰までの調査区間内のNH4-Nの形態変化の実態調査を行った。その結果, 夷隅川の調査区間における硝化速度は0.000から0.360 mg L-1 d-1の範囲にあり, NH4-Nの亜硝酸態窒素 (NO2-N) および硝酸態窒素 (NO3-N) への形態変化率 (硝化率) は平均6.9%であった。夷隅川河川水を用いた室内実験で得られた硝化速度と実測された硝化速度とを比較した結果, 有意な相関が認められた。調査対象の河川底質起源のSSから推定したアンモニア酸化菌 (AOB) 数と文献から得られたAOBの動力学定数から求めた硝化速度は, 0.044から0.104 mg L-1 d-1の範囲にあり, おおむね一致した。また, 15N希釈法により求めた硝化速度は0.00から0.19 mg L-1 d-1の範囲にあり, 調査区間において観測された硝化速度 (0.049から0.360 mg L-1 d-1の範囲) と一致した。
  • 三上 剛史, 眞家 永光, 嶋田 浩, 塚田 祥文, 柿崎 竹彦, 馬場 光久, 高松 利恵子, 丹治 肇
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 5 号 p. 171-179
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    2012年から2014年にかけて, 福島県を流れる阿武隈川の2次支流である石田川 (根古屋) と, 1次支流である広瀬川 (界) の堤外地において, 表層底質の137Cs蓄積状況の変化を調査した。調査では, 同一地点の137Cs蓄積量の変化と河床の微地形変化を調べるため, 動的干渉測位 (RTK) GPSを用いた。福島第一原子力発電所の事故以降2014年の調査までに, 根古屋では完全に11回, 界では部分的に3回程度高水敷は冠水し, それを受け, 堤外地表層の137Cs蓄積量は上流域よりも大きく低下した。つまり, 137Cs蓄積量は, 根古屋では2012年から2014年に72±21%, 界では2013年から2014年に59±34%低下した。しかし, 根古屋は堆積地であり, 濃度は表層下30cmにかけて増加したことから, 出水時に河川に流出した137Cs濃度の低い土砂が, 高濃度の137Csを下層に埋没させたと考えられた。
  • 加藤 裕之, 橋本 翼, 笹嶋 睦, 咸 泳植, 小堀 洋美
    原稿種別: 調査論文
    2016 年 39 巻 5 号 p. 181-185
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/10
    ジャーナル フリー
    下水道の普及に伴い, 河川など公共用水域に占める下水処理水の量的割合が増加し, 下水道が水循環や水環境に与える影響を把握する必要性が高まっている。そのためには市民の下水道に対する理解や協力が不可欠であるが, 市民や若い世代の下水道への関心が低いことが, 大きな社会的な課題となっている。著者らは平成26年度より「下水道を核とした市民科学育成プロジェクト」を始動し, 市民科学の手法を用いて, 市民・学生が河川における下水道の機能や価値を科学的に学ぶプロジェクトを試みた。モデル流域として境川水系を選定し, 流域内の3河川の下水処理方式により河川の水質に与える影響は異なるとの推測を検証することを目的とした。その結果, 河川のアンモニウム態窒素濃度, 硝酸態窒素濃度, N-BODは下水処理場の処理方式によって影響を受けることを, 地域の河川愛護会, 行政, 大学, NPO, 企業の協働で明らかにした。
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