抄録
荒川および多摩川の延長線の交点に位置する東京湾の環境基準点St.35において深さ1 mの底質コアを採取し, 137Csおよびダイオキシン類の鉛直分布を明らかにした。137Cs分布から, 深さ約50 cmまでの堆積速度 (0.78 cm 年-1) と各層の堆積年代が推定された。ダイオキシン類は, 深さ約50 cm (推定1946年) から増加し, 30~32.5 cm層 (推定1968~1971年) で最大濃度となり, その後顕著に減少するという鉛直分布を示した。このようなダイオキシン類濃度の変化は推定年代における環境関連法の整備や, ある種の農薬類の使用履歴などから合理的に説明された。また, 荒川および多摩川河口域の7地点の表層底質中のダイオキシン類組成から, St.35の底質は主として荒川の影響下にあることが示唆された。