水環境学会誌
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調査論文
大阪湾における溶存有機物の起源推定および栄養塩の形態変化
小林 志保松村 圭高河村 耕史中嶋 昌紀山本 圭吾秋山 諭上田 幸男
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2017 年 40 巻 2 号 p. 97-105

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抄録

半閉鎖性海域における健全な物質循環の回復に向けて, 陸域から供給された溶存無機態の窒素・リン (栄養塩) が, 海域の食物連鎖を通じて生物生産に結びつく過程を明らかにすることは重要な課題である。本研究では, 河川から大阪湾に供給された栄養塩の形態変化とその後の挙動を現場観測によって調べた。溶存有機物の安定同位体比から, 湾内の溶存有機物の分布は河川からの供給だけでは説明できず, 海域で生成される溶存有機物が存在することが明らかになった。またそれらは外海側に保存的に拡散しており, 河川から大阪湾に供給された栄養塩のうち湾奥で植物プランクトンに取り込まれて溶存有機態となった窒素等については, 大部分が再び栄養塩に戻ることなく湾外に流出していたと考えられた。さらに, 溶存有機物を基質とする従属栄養細菌, 栄養塩を基質とするシアノバクテリアを経由して微生物食物網に取り込まれる窒素も相当量あることが明らかになった。

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© 2017 公益社団法人 日本水環境学会
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