水環境学会誌
Online ISSN : 1881-3690
Print ISSN : 0916-8958
ISSN-L : 0916-8958
40 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
研究論文
  • 海老瀬 潜一, 川村 裕紀
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 39-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    大規模流域河川の淀川は近畿圏1400万人の上水源で, 大阪湾への最大流入負荷量河川でもある。上流側に琵琶湖や7つのダム群を有する淀川は, 通常は流量や水質が安定しており, 出水時のみ大きな水質変化を示す。2005~2006年の3日に1度の高頻度調査中の11回の出水時調査のほか, 2013年の高頻度調査中に5313台風以来の1318台風によるスーパー出水の流量ピーク時調査ができた。このスーパー出水時に, 19年間調査でのT-COD, TOCおよびSS等の最大濃度と全ての水質項目で最大負荷量を観測した。これらは浄水場への原水水質変化範囲や大阪湾への汚濁負荷インパクトの有用情報となり, スーパー出水時負荷量の年間総負荷量でのシェアの大きさを明らかにした。また, 12回の出水時調査からΣL-ΣQ回帰式を求め, スーパー出水を含む6回の大規模出水時調査の回帰式との差違を明らかにした。2013年の定時調査によるL-Q経験式での非出水期間総負荷量と大規模出水時調査によるΣL-ΣQ式での出水期間総負荷量の推定により, 淀川の年間総負荷量が高精度で算定できることを示した。
  • 窪田 恵一, 楠 和也, 渡邉 智秀, 牧 秀明, 珠坪 一晃
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    堆積物微生物燃料電池 (SMFC) による底質改善効果特性とアノードの設置深度がその性能に与える影響の把握を目的として, 東京湾底質を用いた室内実験による底質改善試験を行った。SMFCを約55日間運転し, 最大電力密度 8.5 mW m-2を発揮した。底質の酸化還元電位はSMFCの適用によって継続的に-197 mVから-17 mVまで上昇した。底質の酸素消費速度は15.4%低減可能であり, SMFCの電流密度が大きく変化した適用後16~32日に大きく減少していた。SMFCのアノード設置深度はその発電性能に大きな影響を及ぼし, 底質表層付近にのみアノードを設置した系の電流密度 (3.0 mA m-2) は, 底質表層より5 cm以深にアノードを設置した系 (16.5 mA m-2) に比べ1/5以下に留まった。表層でも十分な改善効果を発揮するためには, 同時に表層5 cm以深にもアノードを設置する必要があった。
  • 小熊 久美子, 小塩 美香, Lohwacharin Jenyuk, 滝沢 智
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    水中の懸濁粒子が紫外線消毒効率に及ぼす影響を調べるため, 粒径や色の異なるカーボンブラック (CB) またはポリスチレン (PS) 粒子の共存下で大腸菌と大腸菌ファージMS2の紫外線不活化特性を測定した。試料の紫外線透過率の低下傾向は, 粒子の素材や色によらず粒径が同じ粒子で類似していた。一方, 微生物の不活化効率は粒子の素材や色による影響をうけ, CBが高濃度で存在すると大腸菌, MS2とも不活化効率が低下した一方, 白色PSでは不活化効率が上昇し, 白色粒子による紫外線の散乱が不活化に寄与したと推察された。MS2の不活化効率は, 濁度0.6-1.5度, 色度13度以上, 紫外線透過率56-70%の条件でも粒子添加なしと有意差はなかった (p>0.05) 。標準粒子を用いた本研究の実験条件では, 水中に懸濁粒子が存在しても紫外線消毒を阻害しない場合や, 粒子による紫外線の散乱で消毒効率が高まる場合のあることが示された。
  • 黒田 恭平, 當房 陸, 幡本 将史, 山口 隆司, 渡部 紀一, 南條 忠彦, 山内 正仁, 山田 真義
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 醤油製造廃水に適用可能な処理システムの構築を最終目的として, 地下水の加温利用を考慮した創エネルギー型である低温UASB反応器と省エネルギー型好気性処理である無加温DHS反応器を組みわせたシステムにより模擬醤油製造廃水の連続処理実験を行った。その結果, UASB-DHSシステムは, 塩濃度約3.5 gNa L-1, 流入COD濃度6,500±900 mgCOD L-1およびUASB反応器における有機物負荷26±3.6 kgCOD m-3 d-1の条件下で87±7%のCOD除去率を達成した。また, 16S rRNA遺伝子解析に基づいた微生物叢解析の結果, 廃水中のCODの約40%を占める揮発性有機酸はDeltaproteobacteria綱, Firmicutes門, Thermotogae門に属する栄養共生細菌, Synergistetes門細菌とメタン生成古細菌により分解されていることを推定した。
技術論文
  • 小林 卓也, 中野 大助, 小坂 宏史, 斎藤 晴夫, 松本 寛
    原稿種別: 技術論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    淡水域の付着汚損生物である特定外来生物カワヒバリガイ (Limnoperna fortunei) の利水施設への流入防止技術の一つであるストレーナーに関して, ろ過面へのカワヒバリガイの付着による機能低下を防止するために, 付着忌避素材である銅合金のろ材としての適用可能性について検討した。カワヒバリガイが生息する群馬県富岡市の大塩貯池において, 白銅および黄銅合金をろ材とした自動逆洗ストレーナー (設計ろ過粒度30 μm) による通水実験を実施した。その結果, いずれの銅合金の場合も, 浮遊幼生の流入にともなうろ過面およびストレーナー下流配管へのカワヒバリガイの付着は認められなかった。以上より, 銅合金がカワヒバリガイ対策のろ材として利用可能であることが確認された。一方, ストレーナー通水部で酸化被膜の破壊による減耗の発生が確認され, 銅合金の適用には腐食対策が必要となることが明らかになった。
調査論文
  • 鈴木 穣, 柴山 慶行, 岡本 誠一郎
    原稿種別: 調査論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    公的機関の水質調査データ等を用いて, 霞ヶ浦 (西浦) における藍藻類の長期的消長に影響する主要水質因子の検討を行い, 藍藻類は, 底泥表面の溶存酸素濃度が低下し溶解性マンガン濃度が増加傾向にあるときに増殖する傾向にあることを明らかにした。水質の統計解析結果と合わせて, 底泥から溶出する溶解性マンガンが藍藻類の増殖に及ぼす影響を考察するとともに, 底泥表面の溶存酸素濃度の低下は, 海水侵入が主要因と考えられることを示した。併せて, 今後必要な調査・研究に関する提言を行った。
  • 小林 志保, 松村 圭高, 河村 耕史, 中嶋 昌紀, 山本 圭吾, 秋山 諭, 上田 幸男
    原稿種別: 調査論文
    2017 年 40 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/10
    ジャーナル フリー
    半閉鎖性海域における健全な物質循環の回復に向けて, 陸域から供給された溶存無機態の窒素・リン (栄養塩) が, 海域の食物連鎖を通じて生物生産に結びつく過程を明らかにすることは重要な課題である。本研究では, 河川から大阪湾に供給された栄養塩の形態変化とその後の挙動を現場観測によって調べた。溶存有機物の安定同位体比から, 湾内の溶存有機物の分布は河川からの供給だけでは説明できず, 海域で生成される溶存有機物が存在することが明らかになった。またそれらは外海側に保存的に拡散しており, 河川から大阪湾に供給された栄養塩のうち湾奥で植物プランクトンに取り込まれて溶存有機態となった窒素等については, 大部分が再び栄養塩に戻ることなく湾外に流出していたと考えられた。さらに, 溶存有機物を基質とする従属栄養細菌, 栄養塩を基質とするシアノバクテリアを経由して微生物食物網に取り込まれる窒素も相当量あることが明らかになった。
feedback
Top