2017 年 40 巻 5 号 p. 209-214
下水処理場を流域の物質・エネルギー循環の拠点と捉え, 秋田県雄物川流域の一部をモデル流域とし, 4つのシナリオによる回収ポテンシャルを試算した。臨海処理センターを中核とした広域共同化による電力自給率の向上は, 現状シナリオの電力自給率31%がし尿受入シナリオでは有機物の増加により電力自給率は35%へと4ポイント増加していた。公共下水道編入シナリオでは消化ガス発電量は増大するが, 使用電力量の増加が大きく電力自給率は28%と現状シナリオを下回る結果となった。流域下水処理場電力自給率は現状シナリオの19%が, 公共下水道編入シナリオでは28%と9ポイント向上していた。今回の試算結果から臨海処理センターは高いエネルギーポテンシャルを有していると考えられた。リン回収では, 現状シナリオでは73 kg, し尿受入シナリオでは109 kg, 公共下水道編入シナリオでは123 kgでリン回収率23%と最大となった。