本研究は, 地域特性に応じた下水処理の一環として実施されている硝化抑制が周辺水域に及ぼす影響について調査したものである。特に, 硝化抑制前後でのNH4+-N濃度の水域内での輸送状況について調査した。その結果, 半潮汐間の放流水流下に伴うNH4+-N濃度の低下には, 希釈・拡散の寄与が大きかった。また, 放流水の最流下端でNH4+-N濃度の顕著な濃度上昇は見られないものの, 放流水が河口からノリ養殖場を含む沿岸水域 (放流口から13 km付近) まで拡がることを確認した。さらに, 放流水由来と思われる高濃度のNH4+-N水塊が河川上流4~5 km付近まで達していることを確認した。水中からのNH4+除去の効果を塩分およびSSの関係から考察し, 本河川におけるNH4+の河道内底泥への蓄積・移行や放流水由来のNH4+が下流域でSSの吸着除去の作用を受けず, 海域に向かって輸送される可能性を示唆した。