水環境学会誌
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41 巻, 2 号
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調査論文
  • 鈴木 祥広, 西山 正晃, 糠澤 桂, 石井 聡
    原稿種別: 調査論文
    2018 年 41 巻 2 号 p. 19-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー

    水環境におけるふん便指標細菌である大腸菌は, 環境中で再増殖することが知られており, 指標細菌としての妥当性が懸念されている。そこで本研究では, 下水処理水が流入する小河川において, 下水処理水の流入・混合後の流下過程における大腸菌数の変化について調査した。大腸菌のフラックスは, 上流地点と下水処理水の合計量よりも, その下流地点において増大する傾向を示した。また, 下流地点の底質で高密度の大腸菌数が検出された。そこで, パルスフィールド・ゲル電気泳動法によって大腸菌の遺伝子型の類似性を評価したところ, 上流の河川水, 河床付着物, ならびに底質から単離した大腸菌において遺伝子型の一致する株が確認された。以上のことから, 下水処理水の影響を強く受ける小河川では, 大腸菌が河床の付着物や底質に生残・蓄積しており, 再増殖する可能性も否定できないことが示唆された。河川における大腸菌数によるふん便汚染評価の解釈には, 留意する必要がある。

  • 雪岡 聖, 田中 周平, 鈴木 裕識, Zeng Chenghui, 北尾 亮太, 仲田 雅俊, 藤井 滋穂
    原稿種別: 調査論文
    2018 年 41 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー

    本研究では1) 化粧品におけるポリフルオロアルキルリン酸エステル類 (PAPs) の存在実態の把握, 2) 下水処理場におけるPAPsの挙動の検討, 3) 化粧品由来のPAPsの流入負荷量の推定を目的とした。国内外の化粧品を23製品購入し, 2016年8月に5ヶ所の下水処理場を調査した。化粧品中のΣ3 diPAPs (6:2diPAP, 6:2/8:2diPAP, 8:2diPAP) は1,030~58,500,000 ng g-wet-1であった。下水処理場におけるΣ3 diPAPsの濃度は最初沈殿汚泥で479 ng L-1, 返送汚泥で269 ng L-1であり, その負荷量は生物反応槽前後で減少する傾向が示された。化粧品由来のΣ3 diPAPsの流入負荷量は67~1,180 mg day-1であり, その流入負荷率は14±2%を占め, 化粧品由来のPAPsの負荷割合が明らかになった。

  • 山西 博幸, 前田 優斗, 田中 渓介, 大石 京子
    原稿種別: 調査論文
    2018 年 41 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー

    本研究は, 地域特性に応じた下水処理の一環として実施されている硝化抑制が周辺水域に及ぼす影響について調査したものである。特に, 硝化抑制前後でのNH4+-N濃度の水域内での輸送状況について調査した。その結果, 半潮汐間の放流水流下に伴うNH4+-N濃度の低下には, 希釈・拡散の寄与が大きかった。また, 放流水の最流下端でNH4+-N濃度の顕著な濃度上昇は見られないものの, 放流水が河口からノリ養殖場を含む沿岸水域 (放流口から13 km付近) まで拡がることを確認した。さらに, 放流水由来と思われる高濃度のNH4+-N水塊が河川上流4~5 km付近まで達していることを確認した。水中からのNH4+除去の効果を塩分およびSSの関係から考察し, 本河川におけるNH4+の河道内底泥への蓄積・移行や放流水由来のNH4+が下流域でSSの吸着除去の作用を受けず, 海域に向かって輸送される可能性を示唆した。

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