2018 年 41 巻 3 号 p. 55-59
茨城県にある汽水湖涸沼において, 東日本大震災が水質に与えた影響を調査した。湖水の塩化物イオン (Cl-) 濃度は東日本大震災後に上昇し, 震災後3年間は高濃度であった。Cl-濃度が高くなった要因は, 地震による地盤沈下等で湖底面が下がり, 高塩分水塊が遡上しやすくなったことが大きく影響していると考えられる。沈下した湖底面は震災後に年々回復していることが確認され, Cl-濃度も震災3年後には低下した。Cl-濃度の上昇がみられた震災後3年間の水質を震災前3年間と比較すると, 震災後は夏季にクロロフィルa濃度の低下がみられた。震災後にCl-濃度が高くなったことにより, 夏季に優占する藍藻Cyanobium属の増殖が抑制されたと考えられる。