夏季の諏訪湖を対象として植物プランクトン種の変遷と富栄養化指数 (TSI:Trophic State Index) に着目して1948年から2015年の観測結果を解析した。その結果, 1948年以降の約70年間の水質の変遷は夏季の植物プランクトン優占種に基づき4期に区分できた。1期目 (1948~1969年) は植物プランクトン優占種が珪藻から藍藻に変化し, 水質は中栄養から富栄養に進行した。2期目 (1970~1998年) はMicrocystis属が優占し続け富栄養から過栄養であった。3期目 (1999~2007年) は富栄養で溶存無機態リンは10 μg L-1以下, 溶存無機態窒素は600 μg L-1以下を示した。4期目 (2008年以降) は珪藻Synedra属, 窒素固定藍藻Dolichospermum属が優占し植物プランクトン優占種とTSIの変化から判断すると諏訪湖は富栄養から中栄養への移行期と考えられ水質の改善が見られた。
茨城県にある汽水湖涸沼において, 東日本大震災が水質に与えた影響を調査した。湖水の塩化物イオン (Cl-) 濃度は東日本大震災後に上昇し, 震災後3年間は高濃度であった。Cl-濃度が高くなった要因は, 地震による地盤沈下等で湖底面が下がり, 高塩分水塊が遡上しやすくなったことが大きく影響していると考えられる。沈下した湖底面は震災後に年々回復していることが確認され, Cl-濃度も震災3年後には低下した。Cl-濃度の上昇がみられた震災後3年間の水質を震災前3年間と比較すると, 震災後は夏季にクロロフィルa濃度の低下がみられた。震災後にCl-濃度が高くなったことにより, 夏季に優占する藍藻Cyanobium属の増殖が抑制されたと考えられる。