2019 年 42 巻 1 号 p. 27-33
ストレス応答物質を用いた環境モニタリングは, 河川での適用例が少ない。河川の生物への適用に際し, ストレス応答物質の自然変動を明らかにすることが重要である。本研究では, 河川に生息するシマトビケラ属の幼虫を対象に, 個体サイズと季節変化 (2016年2月, 5月, 8月, 10月) がストレス応答物質に与える影響を調べた。個体サイズは, 湿重量に応じて4つのクラスに分類した。その結果, 抗酸化酵素の1つであるカタラーゼは, 大きいクラスほど高い傾向を示した。また, カタラーゼと総抗酸化力は, 湿重量との有意な相関が示された。一方, 同じサイズクラスを対象に季節変化を調べたところ, カタラーゼや総抗酸化力, 酸化ダメージが異なる応答を示した。また, 出水直後の調査であった, 8月については, 酸化ダメージである過酸化脂質が低く, シマトビケラ属は出水によるストレスによって生じた活性酸素種を十分に除去できていたことが示唆された。