2019 年 42 巻 5 号 p. 231-237
東京の地先海域では, 夏季に発生する赤潮等の富栄養化に起因する水質悪化が課題となっている。その対策として, かつて東京の海岸線を形成し水質浄化機能があるとされている浅場・干潟の再生が有効と考えられる。本稿では, その水質浄化能力が明らかになっていない多摩川の河口域を対象区域として, 浅場・干潟等の浅い水域に多く分布する底生動物の浄化能力を定量的に評価することを目的として調査を行った。調査の結果, 多数のヤマトシジミが東京・羽田地区と川崎・大師地区を結ぶ大師橋付近の干潟に生息し, 多摩川河口域における底生動物相の大部分を占めていることが確認された。ヤマトシジミを主とする多摩川河口干潟の底生動物による粒子状有機窒素 (PON) 除去能力は, 調査期間 (2015年8~11月) において1日当たり58.6 kgNと算出され, 同期間の多摩川における窒素負荷量の0.5%に相当するPONが除去されていると推計された。