水環境学会誌
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調査論文
窒素・リン削減が海域の有機物量 (CODおよびTOC) に及ぼす影響:削減の効果とその作用機構
藤原 建紀鈴木 元治大久保 慧
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2021 年 44 巻 6 号 p. 185-193

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抄録

全国の海域での栄養塩類削減により, 全窒素 (TN) ・全リン (TP) の環境基準達成率はそれぞれ96%および95%に達した。それにも関わらず, 化学的酸素消費量 (COD) の達成率は最近30年間ほとんど変わっていない。この相違の原因を, 大阪湾を例に調べた。TN削減により植物プランクトンの高濃度のブルーム (赤潮) の発生を抑制するという富栄養対策が有効に作用していた。このことは粒状態有機物に関連する水質指標によく現れていた。CODが下がらないのは, 主に溶存態有機物に原因があると考えられた。海域のTN濃度低下により, 海域の有機物 (溶存態および粒状態を含む) のC:N比が上昇し, 窒素で測った有機物量は低下するものの, 炭素で測った有機物量の低下はわずかであった。またCODとTOCの乖離が起きていた。栄養塩削減で海域の有機物の質 (C:N比等) が変わり, CODが低下しないことは, 東京湾・伊勢湾と共通していた。

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© 2021 公益社団法人 日本水環境学会
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