2021 年 44 巻 6 号 p. 179-183
昨今, 魚類急性毒性試験ではカテゴリーアプローチによるトレンドアナリシス (TA) 推定値を用いて試験濃度範囲を選択することが可能となったが, TA推定値と毒性実測値を比較した研究はほとんどない。本研究においてn-デシル硫酸ナトリウムのメダカ (Oryzias latipes) に対するTA推定値[48時間半数致死濃度 (LC50) ]と毒性実測値 (96時間LC50) を比較した結果, それぞれ310及び420 mg L-1であり, これらの差は1.5倍以内であった。n-デシル硫酸ナトリウムのアルキル炭素鎖長は既存データのアルキル炭素鎖長の範囲外のため, 本研究で得られたTA推定値は信頼性が低い外挿値とみなされ, 本試験の濃度設定を行う際には根拠が弱いと考えられた。しかしながら, TA推定値に加えて関連する入手可能な情報 (他魚種の毒性値等) も考慮することで, より高い精度で本試験の濃度設定を行うことが可能と考えられる。