水環境学会誌
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調査論文
高濃度アンモニアを含む天然ガス・ヨウ素工場排水が流入する感潮河川における硝化特性
星合 靖夫伴 信一郎芦澤 広工藤 潤三輪 和範日暮 淳山口 秀幸寺田 昭彦畑 恭子河野 史郎
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2023 年 46 巻 4 号 p. 103-112

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抄録

地中から汲み上げられる天然ガス鹹 (かん) 水には, 天然ガスとヨウ素を含むだけでなく, 高濃度のアンモニアも含む。健全な水環境維持のためには, かん水から天然ガスとヨウ素を採取した後, 公共用水域に排水される排かん水中のNH4-Nの形態変化を把握することが重要である。本研究は, 排かん水が放流される感潮河川である一宮川を対象として, 現地調査および室内実験, 河川内の流動と窒素類の移流・拡散過程を考慮したシミュレーションモデルを用いてアンモニアの動態評価を行った。サンプリングと測定に基づいた現地調査と数値シミュレーションの結果, 排かん水は河道の下層を遡上してくる海水の上段 (全水深の中層付近) に沿って河川を流下しており, その平均滞留時間は1~3日程度であることがわかった。この期間にNH4-NからNOx-Nに硝化される濃度について, 室内実験から求めた硝化速度から推測すると, 0.06~0.22 mg-N L-1であった。現地調査においてもアンモニア態窒素が硝化されている様子は確認できず, 採水分析したNOx-N濃度も最大2.5 mg-N L-1程度であったことから, アンモニア態窒素が一宮川で酸化され, 生成するNOx-N濃度が環境基準を超過する可能性がないことが, 数値シミュレーションモデルを用いた解析および現地調査結果の両面から示唆された。

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© 2023 公益社団法人 日本水環境学会
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