2024 年 47 巻 4 号 p. 113-128
東京湾において, 水質, 流速, 気象の連続測定データを用い, 流入した栄養塩が一次生産となり, 大気からCO2を吸収し, O2を放出する過程を調べた。O2およびCO2のフラックスは, 気象変化に伴って, 吸収と放出が, 互いに逆位相で頻繁に切り替わった。生物の代謝によるO2:CO2比は約1:1であるのに対し, 海面フラックスのO2:CO2比は約10:1であり, それぞれ年平均で放出65.4および吸収7.4 mmol m-2 d-1であった。O2の平衡化時間は短く, 栄養塩流入による一次生産で生じたO2は速やかに大気に放出された。一方, CO2の平衡化時間は, 湾内水の滞留時間よりも遙かに長く, 湾内のCO2吸収量は, 栄養塩流入で生じるCO2吸収能力の約1/10とみられた。滞留時間の短い内湾ではO2フラックス測定が重要である。また, 湾内の鉛直循環流を実測し, 湾全体の一次生産と, O2およびCO2輸送の概念図を示した。