本稿では, マイクロプラスチック粒子 (MPs) の特性を考慮した生態リスク評価 (特に曝露評価) の実施に向けて, 国外で提案され活用されている未計測の粒径範囲を含むMPsの濃度推定方法および濃度換算方法を用いて, 日本国内における実際の測定データへの適用を行うことを目的とした。まず, 東京湾鶴見川河口域の表面水中で採取・計測された測定データを連続型のベキ分布に適合させ, 未計測の粒径範囲を含むMPsの粒径分布を推定する方法 (再スケーリング法) を詳述した。次に, 再スケーリング法を東京湾での実測データに適用し, 未計測範囲を含む個数濃度を推定した。また, 東京湾鶴見川河口域での実測データに基づき, 有害性評価で用いられる重量, 体積, 表面積濃度への単位換算を行い, 濃度単位によって地点間の濃度の高低が変化する可能性があることを示した。これらの結果に基づき, 再スケーリング法及び単位換算方法の課題などについて議論した。
東京湾において, 水質, 流速, 気象の連続測定データを用い, 流入した栄養塩が一次生産となり, 大気からCO2を吸収し, O2を放出する過程を調べた。O2およびCO2のフラックスは, 気象変化に伴って, 吸収と放出が, 互いに逆位相で頻繁に切り替わった。生物の代謝によるO2:CO2比は約1:1であるのに対し, 海面フラックスのO2:CO2比は約10:1であり, それぞれ年平均で放出65.4および吸収7.4 mmol m-2 d-1であった。O2の平衡化時間は短く, 栄養塩流入による一次生産で生じたO2は速やかに大気に放出された。一方, CO2の平衡化時間は, 湾内水の滞留時間よりも遙かに長く, 湾内のCO2吸収量は, 栄養塩流入で生じるCO2吸収能力の約1/10とみられた。滞留時間の短い内湾ではO2フラックス測定が重要である。また, 湾内の鉛直循環流を実測し, 湾全体の一次生産と, O2およびCO2輸送の概念図を示した。