抄録
水道原水である河川等水環境に対する有機汚濁の指標として, 細菌増殖能を考慮に入れた新しい指標を開発するとともに, 主に屎尿浄化槽処理水を試料としてその指標による汚濁量の評価法の検討を行った。
その結果, 無機塩を添加した濾過減菌を行った試料に凍結保存した細菌を一定量植種し, 20℃, 48時間振〓培養する。48時間後に得られた全菌数と560nmABSは, それぞれ初期に添加したD-glucose換算の炭素量と有意の相関を示し, また両者の関係も有意であった。以上のことから, 48時間後に試料で得られた560nmABSと対照液において得られた560nmABSの値から, その試料中に存在するD-glucose換算の細菌の利用可能な有機炭素量を得ることができ, これを用いて有機汚濁負荷を評価することは可能である。しかしながら, 有機物の利用効率は細菌種により異なる。
一方, 同じく48時間後に試料で得られた全菌数から対照液において得られた全菌数を引くことにより, その試料のもつ各菌種ごとの細菌を増殖させ得る能力 (G.P.) を評価することができた。そして, 水道水を試料として求めたG.P.を基に, 浄化槽処理水の放流水の安全希釈率を求めることが可能であり, その結果から, その処理水の放流先は, 少なくともその放流量の5倍の水量を有する水系でなければ, 公衆衛生的には安全とはいえないことが示唆された。
また, 既存の水質分析の結果から, F.G.P.については有意な相関を示す水質項目は認められず, 細菌の増殖能を評価するには従来の水質指標のみでは難しいことを示した。