1989 年 12 巻 11 号 p. 724-735,706
手賀沼の底質中の深さ0~30cmの部分でLASが検出 (0.1~500C11~14μg・g-1) され, 底質中のLAS濃度の鉛直分布は季節変動を示した。この変動を説明することを目的として, 実験およびモデル解析を行った。
底質コアサンプルを用いた拡散実験から間隙水中LASの平均的な拡散係数として2.4×10-5cm2・s-1という値が得られた。この値を用いて, 分解項を含む拡散方程式型のモデルで底質中LAS濃度の季節変動を再現した。底質中のLASの分解速度は, 実測値のモデル解析と現場の底質をそのまま用いた分解実験から, これまで報告されている嫌気的な条件での水中のLASの分解速度よりも小さい値 (0.001~0.01d-1) が得られたが, 下層では表層よりも1~2オーダー小さいことが予想された。
最終的に, 拡散による直上水から底質への溶存LASの移行量として-0.20~0.52mg・m2・h-1 (C11~14), 年間平均移行量で底質面積1m2当り約0.7gという値が得られた。