抄録
分配係数はヘンリー定数や溶解度とならんで, 化学物質の環境影響評価において重要な物理化学的性状の1つである。それは環境を大気, 水, 土壌圏と部分系に分けたとき, 化学物質がどの部分に移行しやすいかの目安となるばかりでなく, 水生生物における濃縮係数とも密接な関係のあることが明らかにされてきたこと等による。
元来, 分配係数は実験的に求められるべきものであるが, 数多い化学物質を1つ1つ実測することは莫大な費用と時間を要する。また実測するとしてもあらかじめその概算値を知っておくことは大変有益である。
分配係数は生体内における物質の輸送や吸収とも密接な関係をもつことから, 生化学, 薬学の分野においては比較的古くから研究されてきた。本稿は, 分配係数の理論的予測法の研究に的を絞り, 1960年代以降のこの分野の研究をレヴューした。