抄録
下水中に含まれる窒素は,受容水域における富栄養化現象の要因となり,かつ水生生物や農作物へ様々な悪影響を及ぼすことが知られている。しかしながら,下水中に含まれる窒素は通常の二次処理では除去されずに放流水中に多量に含まれている。
そこで本研究においては,三次処理を目的として,担体にアンバーライト(イオン交換樹脂IRA938)を使用した上向流三相流動床を用い,生物学的窒素除去法の第一段階である硝化について,水理学的滞留時間(HRT)を変化させて実験的検討を行った。
その結果,基質中の有機物の有無に係わらず,流入NH4-NはHRTが0.5hでも90%以上が硝化され,このときの硝化速度は1,300mgN・l-1・d-1となり,従来の活性汚泥法に比べてかなり大きな値になった。これは,アンバーライトのMacro-porusな性質により,担体内部に多数の菌体を保持できることによる。また,NH4-Nの酸化が担体の表面近くで,NO2-Nの酸化が担体のより担体内部で進行することが回分実験による硝化速度の測定結果によって明らかになった。さらに,基質中に有機物を添加し,より二次処理に近い形での実験の結果,低濃度の有機物の除去も硝化と同時に起こり得ることが明らかになり,硝化菌と他栄養性細菌が担体に対して共存して付着していることが明らかになった。