抄録
化学的な処理によって粗さの異なる表面を持った三種類 (塩ビ, ガラス, ポリプロピレン) の支持体を調製し, その表面に形成させた生物膜の酸素消費特性と膜の立体的な構造について実験的に検討した。
生物膜の構造は内部に空隙を持つ複雑なもので, 平面的にも立体的にも一様ではない。生物膜の形成過程は, 巨視的には, 比較的再現性の良い初期過程と, 剥離・再生を繰り返すランダムな過程とから成るが, 顕微鏡的には初期過程でも, 剥離・再生が同時に進行している。
生物膜生成過程に及ぼす液流速の影響は大きく, 液流速15cm・s-1の下で形成された膜は5cm・s-1の場合のものより厚く, 安定であった。支持体材質の疎水性の相違の影響は, 初期形成過程で見られるが, ランダム過程では少ない。支持体の表面粗さの影響は初期およびランダムの両過程で見られた。