廃棄物処理における塩素の挙動に着目し,一般廃棄物が焼却処理されてから埋立処分されるまでの過程における,焼却残渣中の塩素の挙動を明らかにすることを目的として研究を行った。埋立前の飛灰中の全塩素濃度は,焼却灰中の塩素より高値であったが,全塩素中に占める不溶性塩素の割合は焼却灰において大きかった。焼却灰と飛灰のいずれにも,埋立処分される段階で不溶性のフリーデル氏塩 (以下Friedel’s salt:3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O) が含まれていた。埋立地では,雨水の浸透によりpHの低下が進行し,pHの低下に伴う不溶性塩素の可溶化とその洗い出しが進行していた。焼却炉から排出された直後の焼却灰 (乾灰) に加水した結果,加水直後から1日間にわたり不溶性の塩素化合物であるFriedel’s saltの生成反応が進行した。焼却灰と水分との接触により,焼却灰中の3CaO・Al2O3(C3A) の水和反応が進行する際に溶解した塩化物イオンが取り込まれ,Friedel’s saltの生成反応が進行したと考えられた。以上のことより,焼却炉から排出された焼却灰が水分と接触すると直ちに不溶性の塩素化合物が生成されるが,埋立後の雨水の浸透によるpHの低下に伴って分解され,塩化物イオンが洗い流されることが示された。