廃棄物学会論文誌
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19 巻, 2 号
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論文
  • 石橋 俊将, 小宮 哲平, 中山 裕文, 島岡 隆行
    2008 年 19 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    近年,従来よりも層厚を小さくかつ,雨水浸透抑制が可能なジオシンセティックス排水材を用いたキャッピングが開発されつつある。本研究では,ジオシンセティックスを用いたキャッピングの雨水浸透抑制効果を評価することを目的に,キャッピング層を再現した土槽において散水実験を行い,またキャッピング内の水分移動をモデル化し,排水層の形状や施工条件が雨水浸透に及ぼす影響を数値シミュレーションによって把握した。散水実験の結果から,埋立地系外への排水率は約90%,廃棄物層内への雨水の浸透率は約10%であり,ジオシンセティックスを用いたキャッピングが高い雨水浸透抑制効果を有することがわかった。また,数値シミュレーションの結果から,本キャッピングの有効性が確認されたとともに,雨水の浸透率は施工長さの影響を大きく受けることが示された。
  • ―コンポストの普及率等の実際的条件を考慮した分析―
    劉  玉紅, 近藤 加代子
    2008 年 19 巻 2 号 p. 110-119
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    家庭系生ごみの資源化の自治体施策があまり進んでいない原因の一つに,分別への住民協力の調達等の問題がある。住民協力がどの程度得られるかは,生ごみ資源化方法によって異なり,都市化の進展や住宅事情等によっても異なる。従来のLCA研究は,生ごみが100%資源化されるという設定で生ごみ資源化システムを比較している。しかし大型資源化施設において分別への住民協力が低い場合,あるいは家庭用の資源化装置において普及率が低い場合に,実際に資源化される生ごみ量に基づくLCA結果は,100%資源化前提のLCA結果と異なる可能性がある。そこで本研究は,住宅事情,分別回収への協力率,コンポスターや生ごみ処理機の普及率等をLCAに組み込んだ。その結果,住民協力率が異なると,各生ごみ資源化システム間の評価が異なることが判明した。各地域は,どの程度の住民協力を調達できるかによって,それぞれ独自の評価を生ごみ資源化システムに与えることが望ましい。
  • 土田 大輔, 中山 裕文, 島岡 隆行
    2008 年 19 巻 2 号 p. 120-130
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,安定型処分場が分類されたことによる,削減された最終処分費用と潜在的な環境修復費用を推定した。削減された産業廃棄物の最終処分費用は,安定5品目の埋立量および安定型処分場と管理型処分場の処分単価から求めた。潜在的な環境修復費用は,安定型処分場における不適正処分の修復費用とし,過去の不適正処分事例から推定した。推定の結果,1977年度から2003年度までに削減された最終処分費用は4兆3,030億円となった。潜在的な環境修復費用は,修復方法が全量撤去の場合は1兆717億円,部分撤去の場合は5,371億円と推定された。したがって,正味の削減された最終処分費用は3兆2,313億円または3兆7,659億円となり,安定型処分場が分類されたことにより削減された最終処分費用は,潜在的な環境修復費用を考慮すると4分の3程度になると考えられた。
  • 江藤 次郎, 津留 真哉, 崎田 省吾, 張 瑞娜, 島岡 隆行
    2008 年 19 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理における塩素の挙動に着目し,一般廃棄物が焼却処理されてから埋立処分されるまでの過程における,焼却残渣中の塩素の挙動を明らかにすることを目的として研究を行った。埋立前の飛灰中の全塩素濃度は,焼却灰中の塩素より高値であったが,全塩素中に占める不溶性塩素の割合は焼却灰において大きかった。焼却灰と飛灰のいずれにも,埋立処分される段階で不溶性のフリーデル氏塩 (以下Friedel’s salt:3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O) が含まれていた。埋立地では,雨水の浸透によりpHの低下が進行し,pHの低下に伴う不溶性塩素の可溶化とその洗い出しが進行していた。焼却炉から排出された直後の焼却灰 (乾灰) に加水した結果,加水直後から1日間にわたり不溶性の塩素化合物であるFriedel’s saltの生成反応が進行した。焼却灰と水分との接触により,焼却灰中の3CaO・Al2O3(C3A) の水和反応が進行する際に溶解した塩化物イオンが取り込まれ,Friedel’s saltの生成反応が進行したと考えられた。以上のことより,焼却炉から排出された焼却灰が水分と接触すると直ちに不溶性の塩素化合物が生成されるが,埋立後の雨水の浸透によるpHの低下に伴って分解され,塩化物イオンが洗い流されることが示された。
  • 谷川 昇, 古市 徹, 石井 一英, 清水 心太
    2008 年 19 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    牛ふん尿の自動撹拌式堆肥化施設とバイオガス化施設 (高度処理施設) を設置している北海道の畜産農家 (設置農家) に対してアンケート調査を行い,設置農家の特徴と施設の設置動機や利点・留意点等の設置効果を明らかにした。
    設置農家の多くは,北海道での平均飼養牛頭数の約2倍の乳用牛を飼養し,広い農地を所有する経営規模が大きな農家であり,家畜ふん尿管理上の問題の存在と経済的支援制度が,高度処理施設設置の動機付けになったと考えられた。
    高度処理施設設置の利点は,臭気が低減された施用効果が高い堆肥化物または液肥化物が得られること,寒冷地の冬季でも家畜排せつ物を安定処理できることであり,留意点は,建設費用と維持管理費用が高額なこと,維持管理の手間がかかることであった。
    バイオガス化施設の建設費用と維持管理費は,自動撹拌式堆肥化施設より安価である結果が得られた。また,自動撹拌式堆肥化施設とバイオガス化施設の設置に伴うふん尿管理時間の平均増加率は,同程度の約20%であった。しかし,バイオガス化施設では,維持管理する設備数が多い,メーカーに解決依頼するトラブル発生がある等の煩わしさが影響しているために,バイオガス化施設設置農家の維持管理の手間がかかるとする回答率が,自動撹拌式堆肥化施設の約2倍になったと考えられた。
研究ノート
  • 小林 紀子, 森岡 幹夫, 小宮山 鉄兵, 伊藤 豊彰, 三枝 正彦
    2008 年 19 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    山形県の農家および堆肥製造センターでつくられた家畜ふん堆肥87点 (牛ふん堆肥77点,豚ぷん堆肥6点,鶏ふん堆肥4点) のケイ素含量とその簡易推定法を検討した。
    1) 牛ふん堆肥のケイ素含量は,12.1~307.8g kg−1乾物 (以下DW),平均が95.4g kg−1DWであった。豚ぷん堆肥のケイ素含量は,9.5~79.6g kg−1DWで平均34.1g kg−1DW,鶏ふん堆肥のケイ素含量は,2.4~36.1g kg−1DWで平均16.8g kg−1DWであった。
    2) 牛ふん堆肥の炭素含量 (x) とケイ素含量 (y) の間には,y = −0.75x + 354 (r = −0.904) で両者の間に0.1%で有意な負の関係が得られた。また,牛ふん堆肥の灰分含量 (x) とケイ素含量 (y) の間においても,y = 0.44x −39.8(r = 0.970) で0.1%で有意な正の関係が得られた。よって,敷料や副資材に籾殻,わら類,もどし堆肥が使用されている牛ふん堆肥のケイ素含量は,炭素や灰分含量から推定することができると考えられた。
  • ―自動車の「リサイクル設計」に関する一考察―
    外川 健一, 木村 眞実
    2008 年 19 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/03
    ジャーナル フリー
    本稿では,自動車リサイクル法による新しいシステムが,リサイクルしやすい車の開発を促すということが,理論的にいえるのか否かという問題意識の下,「ASR料金」と「リサイクル設計」との関係を調査し,メーカーのいう「リサイクル設計」とは具体的に何を意味し,その取り組みが「ASR料金」の低減につながりうるのかという考察を行った。
    結論は,現段階においてメーカー等によるリサイクルしやすい車の開発が単純にASR料金の低下につながるとは考えられない。その主な理由として,新しいシステムでは「自動車メーカーは静脈部門を中途半端にしか制御できない」こともあり,リサイクル設計のなかでも特に「リユース設計」が,解体の現場で必ずしも反映されないことが考えられる。なお,「リサイクル設計」を実際のリサイクルの現場で活かすためには「リサイクル市場の確保・創造」という要素が重要であることを強調した。
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