酵母によって食品工場排水を処理し, 増殖する酵母から効率よく酵母エキスを抽出する方法について検討した。さらに酵母と抽出した酵母エキスを, 微生物培地材料およびキノコ栽培用生理活性素材へ適用した。酵母エキスを抽出する方法としては, 自己消化法, 酸熱分解法およびアルカリ熱分解法が有効で, アルカリ熱分解法では70~80%のエキス抽出率が得られた。栄養要求性の高い乳酸菌の生育度試験では, 三つの抽出方法で作成されたいずれの酵母エキスも, 市販酵母エキスと比較して遜色のない乳酸菌の増殖が観察され, 8ヶ月間にわたって性状も比較的安定していたので, 微生物用の培地材料として適用できることが確かめられた。またキノコの栽培試験では, 酵母と自己消化法で抽出された酵母エキス添加培地で菌糸生長, 子実体増収に共に効果がみられ, マイタケでは品質も改良されたので, キノコ栽培にも有効であることが明らかとなった。