抄録
難分解性廃棄物の分解特性を究明するため, 廃棄物埋立地を模した硫酸塩還元およびメタン生成の埋立模型反応槽を用いて難分解性廃棄物の分解実験を700日間行った。その結果, 硫酸塩還元菌を中心とする微生物によるメタンおよび二酸化炭素の発生抑制率, リグノセルロースの分解特性や傾向等に関する結果を得たが, セルロースの分解効率等に関する定量的な実験データを充分に得ることはできなかった。
そこで, 本稿では連続運転してきた複合型メタン発酵槽と飽和型硫酸塩還元槽の浸出水を植種として用いたバイアル回分実験を行って, 硫酸塩還元およびメタン生成経路によるセルロースの分解特性を量的に考察した結果を報告する。
バイアル回分実験の結果, メタン生成菌を中心とする反応より硫酸塩還元菌を中心とする反応によってセルロース分解率が高いことがわかった。飽和型硫酸塩還元槽の浸出水 (硫酸塩還元反応を中心とする反応) を用いた回分実験において, 硫酸塩還元反応は酢酸を蓄積する反応であった。特に飽和型硫酸塩還元槽の浸出水を用いたバイアル回分実験においては, 硫酸塩還元反応が電子伝達の86%以上を占め, メタン発生抑制が効果的に行っていることがわかった。したがって, 硫酸塩還元経路がセルロースの嫌気性分解過程に関与していることが明らかになった。