抄録
供給過剰状態にある家畜排せつ物を適切に処理・利用することにより、地域環境汚染の軽減や資源の節約などに代表される環境・社会便益が向上することは、一般的に認識されており対策が複数提案されている。しかしながら、対策の実施に伴う環境・社会便益向上効果を定量的に示した上で、規制や助成金制度を設ける仕組みは整っていない状況にある。
そこで本研究では、家畜排せつ物対策の体系化を行った上で、期待される環境・社会便益の定量化モデルの開発を目的とした。さらにケーススタディーとして、群馬県前橋市における各種家畜排せつ物対策の実施効果を定量的に示した。
その結果、「家畜頭数の制限策」は全体的に費用対便益向上効果が大きく、「メタン発酵処理施設の設置支援策」は期待されたエネルギー自給率向上効果の向上幅が小さく全体的に費用対便益向上効果が小さいことが示された。各対策がもたらす一長一短の効果を定量的に示すことが可能となった。