日本水処理生物学会誌
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生活排水処理施設からの放流水中に存在する溶存態有機物質の蛍光特性
島村 淳宮永 政光野上 祐作
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2006 年 42 巻 2 号 p. 79-83

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抄録

三次元蛍光スペクトル(SFS)を用いて,生活排水の活性汚泥処理水中に存在する溶存態有機物質(DOM)の蛍光特性について検討した。処理水のろ過水のSFSには,励起波長(EX)345 nm,蛍光波長(EM)430 nm付近に蛍光ピークが観察された。Malcolmらの方法で処理水から回収したフルボ酸粉末の水溶液のSFSにもEX330/EM450付近に蛍光ピークが観察された。しかし,フルボ酸(疎水性酸)を捕捉するDAX-8樹脂を通過した通過水のSFSにもEX335/EM425付近に蛍光ピークが存在した。この蛍光物質は洗剤中の蛍光増白剤とは異なるものであった。すなわち,EX330/EM450付近に蛍光ピークを有する蛍光物質として,疎水性の有機物質と親水性の有機物質の二種類が存在したが,後者はMalcolmらが定義するフルボ酸には当てはまらない。そして,親水性の蛍光物質は,陽イオン,陰イオン交換樹脂のどちらにも捕捉され,両性イオンとしての性質を示した。したがって,簡易的に,EX330/EM450付近の蛍光強度から環境水中に存在するフルボ酸様物質の存在量を推定する場合,フルボ酸ではない親水性の蛍光物質部分の取扱いについての議論が,今後,必要と考えられる。

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© 2006 日本水処理生物学会
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