鉄酸化バクテリア(Leptothrix spp.)を利用した地下水からのヒ素除去について検討した。ヒ素と鉄の初期濃度をそれぞれ500μg/lおよび5mg/lとした条件で、バッチ試験とカラム試験を行なった。バッチ試験では、2価鉄の生物学的および物理化学的な酸化過程において、3価ヒ素はそれぞれ60%および51%除去され、5価ヒ素はいずれも96%除去された。他方、水酸化鉄生成後24時間経過後にヒ素を添加した場合には、5価ヒ素の除去率は50%で、3価ヒ素はまったく除去されなかった。バッチ試験結果から、鉄酸化バクテリアによる2価鉄の酸化過程において3価ヒ素は5価に酸化され吸着除去されるといえるが、これが鉄酸化バクテリアによるものとはいえないと考えられた。鉄酸化バクテリアを用いた砂ろ過カラム試験によって、3価ヒ素の除去効果を検討した。流量が7.2l/dおよび3.6l/dのいずれにおいても、流出水中のヒ素濃度は50μg/l未満であった。本試験においては、リンの除去も良好であった。ろ層中の汚泥を分析したところ、鉄およびヒ素の酸化とヒ素の吸着除去は、主としてろ層上部で進行していたといえる。本法は、汚染が進んだ地下水の安価なヒ素除去に応用が可能と考えられた。