抄録
水圏糸状体ラン藻Oscillatoria brevisでは、BxmRリプレッサーの制御系を介して、金属固定能を持つメタロチオネインをコードするbmtAやCPx-ATPase金属トランスポーターをコードするbxa1遺伝子が重金属Cd(II)、Zn(II)、Cu(I)、Ag(I)の存在下で誘導されることが報告されている。そこで、AuストレスでもBxmRリプレッサーを介したbmtAやbxa1の誘導が起こるか否か検討した。まずO. brevisのbmtA、bxa1、bxmR発現量のAu濃度依存的変化およびAu処理での経時変化をRT-PCRにより測定した。その結果、bmtAとbxa1遺伝子はAuにより濃度依存的に誘導され、bmtAでは約50倍、bxa1では約8倍の発現量の増加がともに処理後1~4h付近に見られた。またEMSA(Electrophoretic mobility shift analysis)により、BxmRのbmtA/bxmRまたはbxa1のオペレーター(O)/プロモーター(P)からの解離を検討した結果、確かにin vitroの系でもAuを加えた時にBxmRはO/P領域から解離することが示された。これらの結果から、AuはBxmRを介して、bmtAとbxa1遺伝子の発現を誘導することが強く示唆された。これまでにメタロチオネイン蛋白質はAuに対して他の重金属よりも強い結合能を持つことが報告されており、以上の研究は本ラン藻を用いた工業排水等の水圏からの金の回収につながるものと期待される。