日本水処理生物学会誌
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Microcystis aeruginosaおよびCyclotella sp.の増殖特性および二種間の優占化に与えるリンおよびケイ素濃度の影響
天野 佳正酒井 雄介関谷 卓見銭 鑫藤村 葉子瀧 和夫町田 基
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2009 年 45 巻 4 号 p. 193-200

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抄録
北千葉導水路の稼働に伴い手賀沼における藻類の優占種は、藍藻類のMicrocystis aeruginosaM. aeruginosa)から珪藻類のCyclotella sp.へと変化している。本研究は、導水がもたらした高濃度のケイ素条件(11 mg-Si・l-1)におけるリン濃度の変動がM. aeruginosaCyclotella sp.の優占化に及ぼす影響について、リンの濃度を0.02、0.1および0.5 mg-P・l-1に変化させた単種培養実験およびリンの濃度を0.1 mg-P・l-1としたときの競合培養実験を通じて検討した。単種培養実験を行った結果、M. aeruginosaおよびCyclotella sp.のリンに対する半飽和定数はそれぞれ0.003 mg-P・l-1および0.220 mg-P・l-1、リンの吸収速度はそれぞれ1.86×10-9 mg-P・cell-1・d-1および1.13×10-9 mg-P・cell-1・d-1と示されたことから、低濃度のリン条件下においてM. aeruginosaCyclotella sp.と比較して、より高い増殖ポテンシャルを有していることがわかった。これらの結果は競合培養実験結果に強く反映し、実験最終日におけるM. aeruginosaの細胞数は全細胞数の99 %を占めた。これらのことから、導水がもたらした高濃度のケイ素条件におけるリン濃度の変動は手賀沼における優占種の変化、すなわちMicrocystis aeruginosaからCyclotella sp.への変化に影響を及ぼしていないと推察される。
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© 2009 日本水処理生物学会
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