抄録
浮遊及び抽水性植物によるバイオマス生産を,温度,光,栄養塩の主要な環境要因を考慮して予測する数理モデルの構築を試みた。モデルは一般的な生育ロジスチック式に各環境要因に関するモデル式を導入することで作成し,環境要因モデル式における供試植物(ウキクサ,ホテイアオイ,ミソハギ,ヨシ)の応答特性値であるパラメータは,植物ごとに各種条件下での栽培試験を行い求めた。これらモデルによるシミュレーション結果を,野外池での複数年に及ぶ栽培試験結果と比較した。いずれの植物においてもシミュレーションによる予測値はほぼ実測データを再現しており,本モデルが高い精度で野外での水生植物の生育を予測することが示された。本モデルは簡潔な構成で対象地域の過去の気象並びに水質データがあれば用いることができる。必要な植物ごとのパラメータも試験的に容易に求められるものである。本モデルを用いたシミュレーションより,植栽浄化系での維持管理条件の比較検討に利用できることが考察により示された。