日本水処理生物学会誌
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Microcystis aeruginosaの増殖に及ぼすCa(II)およびEDTAの影響
竹内 亮平竹谷 公貴天野 佳正町田 基
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2011 年 47 巻 3 号 p. 111-118

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抄録

カルシウムおよびエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)制限条件下における培養実験により藍藻類Microcystis aeruginosaM. aeruginosa)の増殖に及ぼすカルシウムおよびEDTA濃度の影響について検討した。M. aeruginosaのカルシウムの要求量を測定するために,カルシウムおよびEDTA濃度がそれぞれ25および13 μmol/lで吸収実験を行った。吸収実験の結果は,M. aeruginosaの細胞密度が5.0×106 cells/mlにまで達したが,M. aeruginosaの吸収によるカルシウム濃度の減少は見られなかったことを示した。M. aeruginosaのカルシウムの要求量は窒素やリンのような栄養塩と比べて非常に少ないことを示唆している。カルシウムおよびEDTA濃度をそれぞれ0から25 μmol/lおよび0から13 μmol/lと変えて培養実験を行うことにより,M. aeruginosaの増殖に及ぼすカルシウムおよびEDTAの影響について検討した。EDTAを加えていない培地において,カルシウム濃度が2.5 μmol/l以上のときはM. aeruginosaの細胞密度は1.5×107 cells/mlにまで達したが,カルシウム濃度が0 μmol/lのときには細胞密度が9.0×103 cells/mlM. aeruginosaの増殖が抑制された。カルシウム濃度2.5 μmol/l,EDTA濃度1.3 μmol/l以下のときはM. aeruginosaはよく増殖したが,EDTA濃度を13 μmol/lに上げると抑制された。これは,EDTAのモル量がカルシウムよりも多いときM. aeruginosaの増殖が抑制されることを意味している。培養実験の結果はM. aeruginosaの増殖にはカルシウムが不可欠であり,EDTAと錯体を形成することにより培地中に無機態のカルシウムが存在しなくなるときに増殖が強く抑制されることを示唆している。

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© 2011 日本水処理生物学会
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