日本水処理生物学会誌
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水生植物植栽浄化施設における水生動物の浄化に果たす役割
林 紀男尾﨑 保夫酒井 不二彦
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2011 年 47 巻 3 号 p. 119-129

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抄録

生態工学を活用した水生植物植栽浄化法は、水生植物を植栽し、その植物が生長に資するために吸収する窒素・リンを植物体の刈り取り除去により浄化せしめる手法である。本法では、1)窒素・リンの植物体への吸収除去効率、2)基質としての土壌が浄化に果たす役割、が検証されることが多い。本報では、秋田県大潟村に創設されたヨシ植栽の水生植物植栽浄化施設において、オタマジャクシ、ユスリカ、ヤゴ、イトミミズ等の多様な水生動物の種別現存量およびこれら水生動物が体内に保持する窒素・リン量を評価し、水生動物が食物網を通じて窒素・リンの系外排除に果たす役割について検討した。その結果、流入水と流出水との差から算定した窒素・リン除去総量に対し、植栽したヨシが吸収蓄積する比率は窒素6%強、リン2%弱と低いことが明らかとなった。他方、植栽したヨシは水生生物の生息空間創出という副次的効果を発揮し、水生動物を介した窒素・リン除去に貢献する事実が明らかとなった。本報では貧毛類イトミミズ、昆虫類オオユスリカ幼虫、同シオカラトンボのヤゴ、両生類トノサマガエルのオタマジャクシの4種に着目したが、これら4種の栄養塩除去総量に占める水生動物体蓄積の比率合計は窒素8.6~13.9%、リン1.4~3.8%にあたり、ヨシ植物体に蓄積される量と同等かそれ以上となることが明らかとなった。このことから、水生動物が羽化や陸生化により施設外に出たり、食物網高次の捕食者に捕食されるなどして栄養塩類の系外排除に大きく貢献していることが示唆された。

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