抄録
琵琶湖におけるカビ臭原因物質の1つである2メチルイソボルネオール(MIB)を産生する糸状性藍藻は、Phormidium tenueと分類されている。琵琶湖よりPhormidium tenueとして分離されたMIB産生株(緑株)と非産生株(茶株)の微細構造を、軟X線顕微鏡、透過型電子顕微鏡および低真空クライオ走査型顕微鏡を用い詳細に調べ比較した。MIB産生株(緑株)の糸状体は粘質鞘を持たない幅の太い細胞からなり、MIB非産生株(茶株)は薄く堅固な鞘を持つ幅の細い細胞からなっていた。緑株および茶株の細胞内部にはポリ燐酸顆粒とカルボキシソーム様構造が観察された。カルボキシソーム様構造は両株で大きさと数に大きな違いは見られなかった。しかし、茶株ではカルボキシソーム様構造とポリ燐酸顆粒の大きさが、ほぼ同じであるのに対して、緑株ではポリ燐酸顆粒が巨大であり、カルボキシソーム様構造よりはるかに大きかった。以上のように、緑株と茶株は、光学顕微鏡的構造は類似するものの、微細構造に大きな違いがみられることから、異なる種である可能性が示された。軟X線顕微鏡、透過型電子顕微鏡および低真空クライオ走査型顕微鏡を用いた微細構造の解析は、微小な上水臭気の原因生物の同定においても有効であることが示された。