日本水処理生物学会誌
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48 巻, 4 号
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報文
  • 繁泉 恒河, 丸尾 知佳子, 野村 宗弘, 相川 良雄, 西村 修, 中野 和典
    原稿種別: 報文
    2012 年48 巻4 号 p. 133-140
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    道路流出水中の存在濃度であるng/lオーダーにおけるPFOSの吸着による除去において、異なる濃度オーダーで道路流出水中に共存する陰イオンが及ぼす影響について検討を行った。PFOSが陰イオン系界面活性剤である事から、陰イオン交換による除去が期待されたが、陰イオン交換性資材によるPFOSの除去率は活性炭による除去率よりも低く、PFOSの陰イオン交換による除去が難しい事が示された。活性炭によるPFOSの除去は、PFOSが単独で存在する場合だけでなく、道路流出水中の共存陰イオンが存在する条件下においても有効であった。さらにNO3およびCr2O72-の吸着は他の陰イオンとの競合により除去性能が低下したのに対し、その存在濃度がNO3、PO43-およびCr2O72-と比較して10-104オーダー低いPFOSの吸着による除去は、共存陰イオンの影響を受けなかった。活性炭による除去率が高い事およびPFOSの吸着が共存陰イオンの影響を受けない事から、ng/lオーダーという極低濃度で存在する道路流出水中のPFOSの除去において、PFOSの疎水性が強く影響する事が示された。
  • 藤林 恵, Woo-Seok Shin, 長濱 祐美, 相川 良雄, 西村 修
    原稿種別: 報文
    2012 年48 巻4 号 p. 141-144
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    土壌に添加した易分解性有機物が分解される際に、土壌に元から含まれる有機物の分解が促進される現象をプライミング効果と呼ぶ。本研究では淡水産巻貝マルタニシが這う際に残す粘液がプライミング効果を引きこすか実験を行った。スクロースを寒天で固めたものと、水田から採集された底泥を有機物源として用いて、両有機物源の表面にマルタニシを這わせ粘液を塗布したものと粘液のないものを準備し、それぞれの有機物分解量をクーロメーターで評価した。その結果、両サンプルにおいて粘液を含む系で酸素消費量が多く、有機物の分解量が多くなることが示された。マルタニシの這う際に残す粘液はプライミング効果を引き起こすことが明らかとなった。
  • Nguyen Ai Le, 井上 大介, 清 和成, 惣田 訓, 池 道彦
    原稿種別: 報文
    2012 年48 巻4 号 p. 145-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    鉄系吸着剤(酸化鉄)はヒ素汚染水の浄化に有効であることが知られている。本研究では、浄水場の生物接触ろ過槽から採取した生物起源の酸化鉄(BIO)を物理化学的および生物学的に特徴づけるとともに、化学起源の酸化鉄(CIO)との比較から、ヒ酸および亜ヒ酸の吸着特性を調査した。BIOは鉄、マンガン、リン酸イオンを豊富に含んでいた。また、内部には代表的な鉄酸化細菌であるLeptothrix属細菌が優占しており、Leptothrixの細胞表面に表面積の大きい鉄・マンガン酸化物の沈澱物が形成していることが示唆された。BIOとCIO(それぞれ5mg-Fe/L)を用いたヒ酸および亜ヒ酸(それぞれ100-1500μg/L)の回分吸着試験、およびLangmuir、Freundlichの吸着等温式による試験結果の回帰により、ヒ素の種類や濃度によらず、BIOはCIOよりも水相のヒ素の吸着に優れていることが明らかになった。本研究で用いたBIOの最大ヒ素吸着量は、ヒ酸で34.25μg-As(V)/mg-Fe、亜ヒ酸で28.99μg-As(III)/mg-Feであり、いずれもCIOに比べて2.7倍大きかった。BIOはヒ素汚染水中に共存している鉄の生物酸化によって、現地で容易に生成させることができるため、BIOを用いた吸着は、飲料水源が高濃度ヒ素汚染を受け、かつ鉄も高濃度で含まれていることの多いアジア地域の途上国における有望なヒ素浄化技術であると考えられる。
  • 竹本 邦子, 山本 章嗣, 水田 剛, 一瀬 諭, 吉村 真史, 難波 秀利, 木原 裕
    原稿種別: 報文
    2012 年48 巻4 号 p. 157-163
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    琵琶湖におけるカビ臭原因物質の1つである2メチルイソボルネオール(MIB)を産生する糸状性藍藻は、Phormidium tenueと分類されている。琵琶湖よりPhormidium tenueとして分離されたMIB産生株(緑株)と非産生株(茶株)の微細構造を、軟X線顕微鏡、透過型電子顕微鏡および低真空クライオ走査型顕微鏡を用い詳細に調べ比較した。MIB産生株(緑株)の糸状体は粘質鞘を持たない幅の太い細胞からなり、MIB非産生株(茶株)は薄く堅固な鞘を持つ幅の細い細胞からなっていた。緑株および茶株の細胞内部にはポリ燐酸顆粒とカルボキシソーム様構造が観察された。カルボキシソーム様構造は両株で大きさと数に大きな違いは見られなかった。しかし、茶株ではカルボキシソーム様構造とポリ燐酸顆粒の大きさが、ほぼ同じであるのに対して、緑株ではポリ燐酸顆粒が巨大であり、カルボキシソーム様構造よりはるかに大きかった。以上のように、緑株と茶株は、光学顕微鏡的構造は類似するものの、微細構造に大きな違いがみられることから、異なる種である可能性が示された。軟X線顕微鏡、透過型電子顕微鏡および低真空クライオ走査型顕微鏡を用いた微細構造の解析は、微小な上水臭気の原因生物の同定においても有効であることが示された。
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