2022 年 58 巻 1 号 p. 25-34
鉱山で排出されるマンガン含有坑廃水の生物処理技術の開発を目的として、マンガン酸化細菌を用いたバイオリアクター試験を検討した。マンガン酸化物及びマンガン酸化能を有する細菌群集が付着した石灰石を充填した小型バイオリアクターを構築し、Mn2+イオン単独またはMn2+及びZn2+イオンを含む模擬坑廃水を通水して、これらの金属イオンの負荷がマンガン除去に及ぼす影響を調査した。水理学的滞留時間は24時間に、初期Mn2+濃度は10 mg/Lに設定した。試験の結果、マンガン除去速度はリアクター内の石灰石表面のマンガン沈積物量に依存することが示された。また、マンガン除去速度はMn2+負荷量を初期値の6倍量に増加させるか、6 mg/L Zn2+を共存させても大きく低下することはなく、金属イオンによる負の影響は認められなかった。バイオリアクターに対する容積負荷が28 mg Mn2+/L/日以下であれば、Mn2+を排水基準値(10 mg/L)以下に低減できることが示された。またMn2+とともにZn2+も除去された。さらに、石灰石表面に集積された細菌群集を解析した結果、主としてα-、β-及びδ-プロテオバクテリア綱とバクテロイデス門に属する多様な従属栄養細菌が検出され、これらの中に既知のマンガン酸化細菌の近縁種も複数含まれることが明らかになった。有機性基質を供給しない模擬坑廃水中において、マンガン酸化活性が維持されてマンガンを除去可能であったことから、マンガン酸化リアクターの坑廃水処理への適用が期待された。