薬剤耐性菌(ARB)と耐性遺伝子(ARGs)による水環境の汚染が問題となっている。現在の下水や排水の処理システムは必ずしもARBやARGsの除去を目的としておらず、下水処理場や合併浄化槽などの小規模排水処理システムはARBの主要な排出源であると同時に、ARGsの水平伝播のホットスポットであると考えられている。そのため、ARBへの感染リスクを低減するためには、下水処理場などにおけるARBやARGsの消長を明らかにする必要がある。本稿では、下水処理プロセスの三次処理となる消毒に焦点をあて、現在用いられている各種消毒技術を利用したプロセスの、ARBやARGs削減に関する利点、欠点とその改善に向けた取り組みについて概説した。また、ARBやARGsの水環境中への排出削減に向けて、今後望まれる方策や新技術開発など、更なる研究の方向性についてまとめた。