2022 年 58 巻 3 号 p. 93-105
OECDをはじめ,化学物質管理に生態系を模した評価導入の必要性が指摘されており,法および体制の整備が進められつつある。本報では,実排水を対象としてマイクロコズムWET試験および従来の単一種試験との比較・検証を行うことで,エコシステムレベルでの毒性評価が可能なマイクロコズムWET試験の有効性について検討し,40年以上に亘り安定に継代されてきたマイクロコズム系を活用し,高い再現性を有する標準試験法を確立することで,低コストで汎用性のある生態影響評価法の公定法化を目標として推進することの意義について述べた。従来法であるWET試験に準じたマイクロコズム構成種を用いた単一種試験による評価とマイクロコズムWET試験による評価の比較においては環境影響に差はみられず,同レベルの感受性を有していることが示され,マイクロコズムは物質循環・エネルギーフロー・生物間相互作用といった生態系の基本的な原理原則を有するエコシステムレベルでの影響評価が可能であることから,マイクロコズムWET試験は有効な手法の一つになり得ると考えられた。