2022 年 58 巻 4 号 p. 127-136
ウキクサの植物体と根圏微生物からなるウキクサホロビオントは,水質浄化作用とバイオマスの資源価値から,維持管理が簡便で消費エネルギーを抑制できる資源生産型水質浄化への活用が期待され近年注目されている。その浄化作用は,植物体による栄養塩吸収作用と根圏微生物による分解作用にまとめることができる。近年の種々の研究成果は,幅広い有機性および無機性の汚濁,汚染物質に対して有効な浄化効果と,ウキクサの高いバイオマス生産性,高いタンパク質やデンプン含有量並びにメタンやエタノール発酵への応用性を明らかにしている。さらに,各種の分解微生物や植物成長促進微生物のウキクサ根圏への導入を試みた挑戦的な研究成果はウキクサホロビオントの機能を強化することの可能性を示している。このように,これまでに得られている知見は,ウキクサホロビオントの持続的な環境浄化技術への高い応用性と,実用化に向けた研究開発の重要性を明らかにしている。