日本水処理生物学会誌
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活性汚泥からの二種類の水酸化芳香族スルホン酸分解細菌Cupriavidus basilensis PSY7株及びDelftia lacustris HQS1株の分離と特徴づけ
武尾 正弘猪野 椋太大滝 世和黒江 真由小牧 洋太石澤 秀紘
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2024 年 60 巻 4 号 p. 73-86

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抄録

 芳香族スルホン酸(ASs)は、廃水や天然水の主要な汚染物質の一群であり、一般的には生物分解に対して抵抗性である。光分解やオゾン処理はASsの除去に効果的であるが、p-フェノールスルホン酸(PS)やハイドロキノンスルホン酸(HQS)のような水酸化された芳香族中間体が蓄積される傾向にある。PSやHQSのような中間体の生物分解の可能性を検討するために、活性汚泥から1株のPS資化細菌と1株のHQS資化細菌を分離し、それぞれPSY7株及びHQS1株と命名した。PSY7株は1 mMのPSを30hで分解・増殖し、一方、HQS1株も1 mMのHQSを48hで資化できた。遺伝的分析あるいは生化学/生理試験により、PSY7株はCupriavidus basilensis、HQS1株はDelftia lacustrisに属すると提案された。HQS1株は両基質とも分解できたので、さらにその生分解について検討を進めた。ゲノム配列に基づいた遺伝子破壊研究により、HQSと化学構造の似た、ゲンチジン酸の環開裂に必要な遺伝子(genA)が、HQSの分解と深く関係することが明らかとなった。これらの情報は、ASsの効果的かつ完全な分解に貢献し得る。

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