日本水処理生物学会誌
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活性汚泥の酸素呼吸に関する研究 (III)
スキムミルク基質の馴養性について
尾藤 朋子北原 節子
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1975 年 11 巻 2 号 p. 12-18

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抄録

異質基質 (スキムミルク) に対する活性汚泥の馴養性を明らかにするために, 基質の濃度変化および短時間曝気による汚泥の馴養性保持について第II報1)と同様の手法を用いて検討を加え, つぎの結果を得た。
1) 異質基質スキムミルクの濃度変化に対する馴養性は基質濃度BOD400ppmで10日以上, 700ppmで16日以上の馴致日数によって汚泥生物は基質に順応し, 高い基質分解能が得られた。しかし, 900ppmでは24日間の馴致をおこなっても馴養性が得られなかった。
2) 異質基質の馴致日数は同質基質の場合より多くの日数が必要であった。また, 馴養性の限界濃度は同質基質より低濃度の700ppmであった。
3) 2) の原因としては人工下水とスキムミルクの成分比の相異があげられるが, 特にC/N比と栄養塩類のアンバランスが考えられる。
4) スキムミルク基質馴致汚泥は400ppm3時間, 700ppm4時間の曝気で最高除去率を示すことがわかり, 曝気時間を短縮することも可能であることが明らかとなった。
5) 曝気時間短縮による処理法は400ppmの3時間曝気で長時間曝気よりかなり優れた処理効率が得られたが, 700ppmの4時間曝気では短時間処理法の効果が得られなかった。
6) 以上の結果から, 異質基質のスキムミルクに対する活性汚泥の馴養性は同質基質の人工下水と比較して馴致日数, 馴致基質濃度の限界等はやゝおとるが, 対象基質に汚泥生物が十分馴致されれば同質基質と同程度の呼吸活性能および浄化活性能を持つことができ, 高い基質分解能が得られることがわかった。
本研究の概要については第31回公衆衛生学会総会および第10回水処理生物学会において発表した。

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