日本水処理生物学会誌
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富栄養化に及ぼす下水および生活排水処理水の影響
冨士元 英二古屋 昇稲森 悠平
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1980 年 16 巻 1-2 号 p. 11-17

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抄録
霞ケ浦, 湯ノ湖, 多摩川の富栄養化の現状を調査し, これらの水域から採取した試料を用いて栄養塩添加試験, 下水処理水および生活排水処理水の自然水域に及ぼす影響についてAGP, TOCを測定することにより実験的検討を行なったが, 結果は次のように要約することができる。
(1) 藻類の増殖を刺激する制限要因は霞ケ浦, 湯ノ湖では窒素, 多摩川ではリンであることがわかった。
(2) 下水を活性汚泥処理した場合でも生活排水を回転円板処理した場合でも2次処理水のAGPは各々250, 320mg/lと非常に高く富栄養化を防止するためには3次あるいは高度処理が必要なことがわかった。
(3) 下水の2次処理水を生物化学的同時処理した場合と生活排水の2次処理水を加圧浮上処理した場合とではAGPは50mg/l程度と同じ位の処理が行なわれ両処理法は藻類の増殖を抑制するために効果的であることがわかった。
(4) 2次処理水を脱窒, 脱リン処理するとAGPは7mg/lにまで低下したことおよび霞ケ浦と多摩川の水に脱窒, 脱リン処理した水を入れてもAGPの増加は10%以下でほとんど影響なかったことから, 窒素およびリンを除去することにより富栄養化の防止が可能なことがわかった。
(5) 窒素が藻類増殖の制限要因となっている霞ケ浦の水に脱リンした水を入れてもAGPはほとんど低下しなかったし, リンが制限要因となっている多摩川の水に脱窒した水を入れてもAGPはほとんど低下しなかったことから, 放流水域に見合った高度処理を行なうことが必要であることがわかった。
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