日本水処理生物学会誌
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Oscillatoriabrevisの増殖とgeosmin産生に及ぼすキレート剤の影響
中島 進青山 勲八木 正一
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1993 年 29 巻 2 号 p. 71-84

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抄録
かび臭物質産生ラン藻O.brevisの鉄吸収能について検討することを目的に、鉄とのキレートの安定度定数が異なる6種のキレート剤EDTA、DTPA、EDDHA、HBED、DESF、BPDSの鉄錯体を用いて上記ラン藻の培養実験を行った。
0.brevisはFe (III) とDTPA、EDDHA、HBEDとのキレートを鉄源として培養した場合、Fe (III) との安定度が高いキレートを生成するキレート剤ほど、対照 (Fe-EDTA) に比べて、増殖が低下する傾向が認められた。しかしDTPAを鉄濃度に対して過剰に添加してもO.brevisの増殖速度が低下し、増殖量は減少するものの15倍モルまで過剰にDTPAを添加しても、増殖は認められた。さらにEDDHA及びHBEDについては鉄濃度に対して16倍モル及び5.6倍モル過剰に添加しても、O.brevisの増殖が認められた。従って高い安定度を示すFe (III) 錯体を形成するキレート剤の過剰を加えても、O.brevisは鉄を吸収できることが判明した。
またO.brevisはFe (III) -EDTAの代わりに、Fe (II) BPDSを鉄源として利用できることが判明し、鉄濃度に対して、6.6倍モル (実験に用いた最高濃度) まで過剰に添加したBPDS {培地中で鉄はFeII (BPDS) 3キレートとして存在} はO.brevisの増殖を阻害しなかった。Fe (II) がBPDSとのキレートとして存在している状態で、他のキレート剤を添加してO.brevisの増殖を検討した。その結果、安定な2価鉄キレートFe (BPDS) 3が生成した状態で、EDTA、DTPA、EDDHAあるいはHBEDを添加した場合でもO.brevisの増殖は阻害されなかった。またgeosmin産生量はいずれの場合も増殖量に比例した傾向を示した。さらにFe (III) -DESFを鉄源として、EDDHAあるいはHBED過剰に添加しても、O.brevisの増殖はまったく阻害されなかった。
以上の結果から、O.brevisはその細胞表層に著しく強力なキレート形成基を持っており、優れた鉄吸収機能を有することが示唆され、今後その機構の解明に興味が持たれる。今回及びこれまでの著者らの実験結果6-12) から、O.brevisはFe (III) -EDTA、FeII (BPDS) 3、コロイド鉄、酸化鉄 (Fe2O3、Fe3O4) 、Fe (III) -DESF、スポンジ鉄、鉄粉、クエン酸鉄 (II) 、リン酸鉄 (III) のような様々な形態の鉄を鉄源として利用し、吸収することができることが明らかになり、また安定なFe (III) キレートを形成するキレート剤が過剰に存在する場合でもO.brevisの増殖が阻害されない、すなわちきわめて強力な鉄吸収能力を有していることが示唆された。こうしてO.brevisは鉄吸収の機能面においてきわめて幅広い環境変化に適応しており、これまでの著者らの実験で検討した4種のかび臭物質産生ラン藻O.tenuis、A.macrospora、P.tenue、O.brevisの中で最も優れた鉄の吸収機能を有していることが認められた。
本研究の結果の一部は第30回日本水処理生物学会 (1993年10月、於高岡市) において発表した。
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© 日本水処理生物学会
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