抄録
グルコース・無機塩の人工下水に馴化した活性汚泥について優占菌を調査した結果, Flavobacteriumと酵母が最も多く, それぞれ46%と38%を占め, 他にBrevibacteriumが約13%であった。
ポリグルコースの蓄積能は酵母がとくに高く, Brevibacteriumも高かったが, Flavobacteriumではほとんど認められなかった。呼吸速度の実験によるとグルコースを基質とした場合では酵母が高い活性を示したが, Flavobacteriumでは著しく小さく, 逆に酵母の分泌する酢酸, 乳酸ではFlavobacteriumの活性が比較的高かったが酵母では内生呼吸とほとんど同じであった。したがって, 活性汚泥中ではグルコースはおもに酵母によって代謝され, 分泌された有機酸などがFlavobacteriumによって除去されるものと考えられる。酵母とFlavobacteriumの混合懸濁液でのグルコース代謝実験でもこのことが確かめられた。しかもグルコースの除去速度とポリグルコースの蓄積速度は酵母単独の場合よりもFlavobacteriumの共存した方が高かった。したがって活性汚泥中では各種の微生物間の相互作用も重要な問題であろう。終りに, 種々の御助言をいただき, また本稿に目を通していただいた東京都立大学理学部手塚泰彦助教授および全有機炭素の分析をしていただいた水道機工株式会社の高田芳昭氏に厚く感謝いたします。
なお, 本稿の要旨は1969年10月26日, 第6回水処理生物学会大会において発表した。