紙パ技協誌
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パルプ特集
漂白工程における排水セミクローズド化の操業経験
古井 正美
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2004 年 58 巻 7 号 p. 906-909

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抄録

三菱製紙八戸工場では,漂白白水の部分クローズド化を可能とすることを条件として,新しいECF漂白シーケンスを開発した。このシーケンスは,キレート剤(Q)とキシラナーゼ(X)の同時前処理を行う(QX)処理を持つ過酸化水素ベースのECF漂白シーケンス(QX―P1―H―P2―D)である。
このシーケンスを用いた工業実験を行う前に,工程内における金属バランスの調査を行った。工程内へ流入する金属は,チップ由来が殆どである。回収系へ流入した金属は,その殆どがドレッグスとして排出される。しかし,SiとAlは,ドレッグスによる除去率が低いため,系内への蓄積が懸念される。
工業実験は,八戸工場にある3系列のパルププラントのうち1つを使い72時間にわたり実施され,ECF漂白によるLBKPの生産が行われた。この中で,前段の漂白排水を回収しセミクローズド化を行った。回収系へ持ち込まれる金属量は,カルシウムで約3倍,珪素で約4倍と増加する。漂白排水の回収系への回収により黒液中の金属濃度が上昇傾向にあったが,それほど顕著なものではなかった。コスト面や長期操業における金属蓄積の影響等の検討が今後の課題である。

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© 2004 紙パルプ技術協会
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