紙パ技協誌
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製紙技術特集 I
最近のカラーとラテックスの動向
松井 尚
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2006 年 60 巻 12 号 p. 1786-1797

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抄録

カラーとラテックスについての「最近の動向と知見」についてまとめた。カラーの動向を成分の低コスト化,塗工紙品質の向上,生産性の向上から捉えた。低コスト化については,強度の強いラテックス使用によるバインダーの減量が進み,炭酸カルシウムリッチ化も,なお進行している。品質的には,白色度の向上が蛍光染料の増加により,白紙光沢の向上が微粒顔料や有機顔料の使用により進んでいる。印刷光沢は,塗工層の平滑化とインキ浸透の抑制により向上が図られており,アスペクト比の大きい顔料やインキセットをハードにできるラテックスが使用されている。また,生産性向上に関しては,高速塗工化・高固形分塗工化のために,カラー流動性の向上が炭酸カルシウムリッチ化,澱粉の減少,ラテックスの小粒径化により図られ,少量の澱粉や適切な保水剤使用により保水性の維持が図られている。そして,乾燥条件が過酷になってもバッキングロール汚れを起こさない粘着性の低い,洗浄され易いラテックスが求められている。
最近,求められているラテックスは,上記から分るように,「強度・操業性の良好なラテックス」と「印刷光沢の良好なラテックス」の2つに集約される。前者は,小粒径化による流動性と強度の向上,粒子モルフォロジーの制御による粘着性低下と耐衝撃性付与による強度の向上,そして,ポリマー構造・分子量制御による強度の向上による改良が進められている。後者は,塗工層の平滑化,インキ浸透抑制に加えて,インキ層を厚くして効果を高めるべく,粒子モルフォロジーの制御による改良が試みられている。

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© 2006 紙パルプ技術協会
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