紙パ技協誌
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総説・資料
板紙抄造系における硫酸バンドを削減したトータルウェットエンドシステム
瀬崎 崇生吉本 康秀
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2006 年 60 巻 8 号 p. 1143-1151

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抄録

製紙業界では近年,地球環境問題に対する配慮が必要不可欠になる一方で,収益改善を目的とした合理化,コストダウンを余儀なくされており,製紙工程の環境が急激に変化している。板紙に着目すると,雑誌古紙の配合比率が増加するなど原料事情が変化し,抄造系への炭酸カルシウムの混入量が増加する傾向にある。そのため,抄造系のpHが上昇し,それを抑えるために過剰な硫酸や硫酸バンドを使用している現状がある。また,石膏スケール問題が頻繁に発生したり,電気伝導度が上昇し内添薬品の効果が低下したりするなどの弊害が生じている。
このような状況の下,板紙において硫酸バンドを削減しながら,いかに有効に使用するかを模索することが今後重要となる。硫酸バンドを減少するだけではデメリットも生じるが,トータル処方としてのウェットエンドシステムを適用すれば,それらのデメリットを解消できるだけでなく,相乗効果による品質向上が見込まれる。本報では硫酸バンド量を削減し,地球環境への配慮,品質向上,生産性の向上といった現代の板紙抄造が抱える課題を同時に解決することができるトータルウェットエンドシステムについて紹介する。

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© 2006 紙パルプ技術協会
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