紙パ技協誌
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パルプ特集
印刷適性におよぼすパルプの影響について(I)
谷 幸雄
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2007 年 61 巻 7 号 p. 773-779

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抄録

情報伝達機能として紙をとらえた場合,紙は印刷を施されて初めて付加価値が発生し,市場においてその商品価値を認められるものであるから,印刷というものを十分に念頭においた上で,紙,パルプを論じる必要がある。今回は特に印刷の立場から,パルプを逆照射して見た場合のパルプに要求される品質とは何かについて考察を行った。印刷適性という場合,印刷作業適性と印刷品質適性があるが,2つの適性は必ずしも両立せず,しばしば相反する要求となり,両者のバランスを取って紙質を決定する場合が多い。印刷は画像の濃淡を網点に分解し,点の連続集合体として画像を表現しており,版による印刷方式に違いはあっても,この原理は同じである。インキが版より紙に転写される際に,この網点がいかに再現されるかによって,印刷仕上がりが異なるため,網点再現性というものが重要視される。どの印刷方式においても,この網点再現性には平滑性が不可欠であり,当然パルプにも要求される品質である。他にもパルプが影響を及ぼす印刷適性には,ピッキング,パイリング,ブリスター,折り割れ,ひじわなどが挙げられ,それぞれ,表面強度,断裁性(紙粉),層間強度,引張り強度,収縮適性といったものがパルプに求められる。
最終製品である印刷物における問題点を把握することが,中間製品であるパルプの品質を検討する上で重要なポイントとなる。また,情報伝達機能としての「紙」の構成要素であるパルプの品質特性は,パルプ単体の品質やコストだけでなく,最終製品である印刷物の品質適性・作業適性を考慮に入れて検討していく必要があり,今後のパルプについての研究開発には,印刷適性もひとつの大きな指標となることが予測される。

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© 2007 紙パルプ技術協会
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